自宅退院を目指すうえで、歩行速度は欠かせない指標です!
特に脳卒中患者においては、歩行速度が自立度や生活範囲に大きく影響することが知られています。
出典:
- Perry J, Garrett M, Gronley JK, et al. : Classification of walking handicap in the stroke population. Stroke. 1995; 26: 982─989.
- Fulk GD, Ying H, Boyne P, et al. : Predicting Home and Community Walking Activity Poststroke. Stroke. 2017; 48: 406─411.
そんな歩行速度に深く関わる要因のひとつが、TLA(Trailing Limb Angle)です!
TLAの考え方を深く知ることで、確実に臨床の幅が広がっていきます。
本記事では、最新の文献と臨床経験をもとにTLAの重要性を徹底解説します。
歩行機能の改善に役立つヒントが満載ですので、ぜひチェックしてみてください!
歩行速度に関係するTLAとは

TLAとは矢状面において大転子から第5中足骨頭へのベクトルと垂直軸が成す角度を指します。
この角度は歩行時に下肢がどれだけ後方へ伸展できるかを示し、歩行の効率や推進力に大きく関与する重要な指標です。
引用(図):Hsiao H, Knarr BA, Higginson JS, Binder-Macleod SA. The Relative Contribution of Ankle Moment and Trailing Limb Angle to Propulsive Force during Gait. J Biomech. 2015;48(11):3046-3052.
TLAと歩行速度の関係
脳卒中患者において、TLAは歩行時の推進力に深く関与しており、歩行速度との関連が報告されています(Lewek & Sawicki, 2016)。
TLAが大きいほど、歩行時の前方への推進力が向上し、歩行速度の改善につながる可能性があります。
そのため、リハビリテーションにおいてTLAを意識した介入が、より効率的な歩行訓練に結びつくと考えられます。
出典:
TStにおけるTLAと足関節モーメントの影響
歩行周期の後期であるTStでは、TLAと足関節モーメントが歩行速度に与える影響が比較されています。
ある研究では、TLAの影響が足関節モーメントの約2倍に及ぶことが示されており(Hisano et al., 2015)、TLAが歩行速度を決定する上で極めて重要な因子であることが明らかになっています。
TLAは単なる角度の指標ではなく、歩行時の推進力や歩行速度の向上に直結する重要な要素です!
特に脳卒中患者の歩行機能改善を目指すリハビリにおいて、TLAの向上を意識した介入が効果的である可能性が示唆されています。
今後の臨床において、TLAの評価と改善に着目することが、より質の高い歩行トレーニングにつながるでしょう。
出典:
TLA増加のために必要なポイント5選

TLAを増加させるためには、以下の点を意識することが重要です。
- 立脚中期に重心を高く保つ
- 股関節の十分な伸展を促す
- 足関節の適切な底屈モーメントを確保する
- 前足部への適切な荷重を意識する
- 歩行のリズムを意識する
それぞれについて詳しく解説していきます!
立脚中期に重心を高く保つ
立脚中期において重心を高く維持することで、股関節の伸展がスムーズに行われるための余地を確保しやすくなります。
膝関節と足関節の協調運動を意識し、体幹の前方移動を妨げない姿勢を維持することが重要です。
【介入方法】
1.シングルレッグスクワット
- 手順:
- 椅子の前に立ち、片足を浮かせる
- 立っている足の膝を軽く曲げながら、お尻を後方に引く
- 背筋を伸ばしながら、股関節を伸展させて元の位置に戻る
- ポイント:
- 膝が前に出すぎないようにする
- お尻を後方に引くことで、股関節伸展を意識する
- 立脚側の足でしっかりと地面を押す感覚を得る
2.タンデム歩行
- 手順:
- まっすぐな線を意識しながら一直線上を歩く
- 歩行中に重心が下がらないように意識する
- ポイント:
- 重心が高い位置にあることを感じながら歩行する
- 足底全体で体重を支え、前足部へしっかり荷重する
股関節の十分な伸展を促す
立脚終期では、股関節の十分な伸展を意識することが求められます。
そのためには腸腰筋の柔軟性を確保し、股関節前方の可動域を維持することが必要です。
また大殿筋やハムストリングスを活用し、股関節伸展を安定させることも重要なポイントとなります。
【介入方法】
1.腸腰筋ストレッチ
- 手順:
- 片膝を床につけ、反対側の足を前に出す(ランジ姿勢)
- 骨盤を前傾させずに、ゆっくり前方に重心を移動する
- ポイント:
- 骨盤が後傾しないように注意
- 股関節の前面がしっかり伸びていることを意識する
2.ヒップエクステンション(股関節伸展強化)
- 手順:
- 仰向けに寝て、膝を90度に曲げる
- お尻をゆっくり持ち上げ、股関節を伸展させる(ブリッジ運動)
- 5秒キープ後、ゆっくり戻す
- ステップアップ:
- 片足を浮かせて片脚ブリッジに変更する
足関節の適切な底屈モーメントを確保する
腓腹筋やヒラメ筋を効果的に活用することで、TLA増加に必要な推進力を得ることができます!
さらに、足関節の可動域を適切に維持し、底屈動作が制限されないようにすることが大切です。
加えて、地面反力(GRF)の方向を適切にコントロールすることで効率的な歩行を促進します。
【介入方法】
1.カーフレイズ(つま先立ち運動)
- 手順:
- 壁に手をつき、つま先で立ち上がる
- ゆっくりと踵を下ろす
- ステップアップ:
- 片足で実施する(片脚カーフレイズ)
前足部への適切な荷重を意識する
立脚終期において前足部へ荷重をかけることで股関節の伸展が促され、TLAの増加につながります。
特に下腿後面の筋力やコントロールが重要となるため、足部の安定性を高めることが必要です!
重心が後方に偏りすぎるとTLAの増加が妨げられるため、前方へ移動させる意識を持ちましょう。
【介入方法】
1.ランジウォーク
- 手順:
- 片足を大きく前に踏み出す
- 後ろ足の股関節を十分に伸展させる
- ポイント:
- 体重をしっかり前足部に乗せる
- 股関節の伸展を意識する
歩行のリズムを意識する
対側下肢のスムーズな前進(スウィング)はTLAの増加を助長します。
そのため、左右対称的な歩行を意識することが重要です!
重心移動をスムーズに行い、歩行のバランスを崩さないように注意しましょう。
過度な骨盤の後傾を避け、体幹を適切に制御することで、歩行効率の向上が期待できます。
【介入方法】
1.メトロノーム歩行
- 手順:
- メトロノームを80BPMに設定
- 一定のリズムで歩行する
まとめ
TLAは、歩行速度や推進力に大きく影響を与える重要な要素です!
特に脳卒中患者や歩行機能の改善を目指す方にとって、TLAの向上は歩行効率を高める鍵となります。
本記事では、TLAを増加させるために必要なポイントについても解説しました。
これらのポイントを意識したリハビリテーションやトレーニングを実践することで、より安定した効率的な歩行パターンを獲得することが可能です。
TLAの改善を目指し、歩行機能の向上をサポートするために、ぜひ日々のリハビリに取り入れてみてください!